サイトのページ 一覧へ
「蝉林舎の本棚から」の もくじ へ
(C) 学習塾 蝉林舎 All rights reserved.
剽窃禁止(FPRn8712546-1)
《 ぜんりんしゃの本棚から 》


新開ゆり子 著、 岸 葉子 絵
「サロマ湖のほとりから」 金の星社
蝉林舎の本棚から 1



(これから読む人のために詳細は省略)

 以下 まず、紀伊国屋書店さんの内容紹介文を引用。
《 母の再婚で、北海道のサロマ湖のほとりにある牧場に暮らすことになった朝子。妹とともに、新しい家族の中で、小さくなって過ごす朝子のただひとつの楽しみは、札幌に住む親友ミチルとの文通だった。小さな牧場の朝は、牛の乳しぼりで始まる。いつのまにか、牛の世話がうまくなっていた朝子は、広大な自然の中で、自分のかたくなだった心が、少しずつ、ときはなたれていくのを知るのだった。小学校5・6年生から。 》

 前回この欄に、「舞台背景が都市化しきっておらず、生活が生産の場に近いものを」と薦めたが、その観点からの紹介。先日、ある高名な作家 Q氏の児童書と読み比べた。人物設定が似ているので併読したわけだが、そちら(Q氏の方)は すべて都会の設定であるためか ファンタジー気味で 味気ない。こちらは 農民もの・歴史ものの本家みたいな人で、足が地についている。他の作品での農村とは違えて 北海道の牧場という今風の設定なので、読み慣れない子供にとっても 大変良い本だ。

 もう一つ。前々回のこの欄で指摘した「日常会話の世界」から「思考言語の世界」への成長という意味で、一人対一人の「文通」は 現実の子供の生活においても、またこのような読み物の手法としても とても有効だ。前回の 壷井 栄 にも手紙のやり取りを取り入れた良い作品があるので 後日紹介する予定。「日常会話とメールの世界」に閉じ込められている子供には、それこそ娯楽の読書から離れるきっかけになるだろう。
(次ページへ)


「蝉林舎の本棚から」の もくじ へ