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《 ぜんりんしゃ カレント コラム 》


思考言語への第一歩(読書について2)



 前回の投稿「中総体が終わっても・・・」で 部活動の時間が過剰だ と指摘したが、さらにもっと基本的なことがある。とても大事なことなので 少々堅苦しく切り出さざるを得ないが、それは「言葉」の問題だ。勉強であれ何であれ、子供に関する実に多くの問題がここに帰着する。

 小学校を卒業する頃には、(日本語で)日常会話に困るようなことはなくなる。でも、新聞を自由に読める子はまず居ない。中学からのこの時期は、《日常会話の世界》から 次のステージ《思考言語の世界》へと舵を切る とても大切な時期だ。周りの大人が このことに気づかず 表面的な子供の点数や順位にばかり捕らわれていると、大事なスタートの機会が失われてしまう。

 問題は山ほどあって 別の機会に譲るが、 例えば、テレビ漬け(芸能漬け)やゲーム漬け スマホ漬けがなぜ悪いかといえば、「これらが勉強時間を奪う」などといった単純なことではなく、そのほとんどが《日常会話の世界》に子供を閉じ込め、成長を止めてしまうからだ。「英会話」の早期教育がなぜ問題視されるか といえば、《思考言語の世界》へのスタートのタイミングを見計らっている丁度そのときに 《日常会話の世界》が 子供の足元を掬(すく)ってしまうからだ。(*下注も参照)
 さらに挙げれば、子供を虜にしているSNSに至っては、飛び交う片言が日常会話より更に下で、この時期の子供の現実の問題として その影響は深刻だ。(「デジタル推進」の一方の本質が こんなところにも垣間見えるということだろう。)

 それにしても、おりこうになるためには(!) 母語による読書の現況が、質も量もあまりにも貧弱だ。読書こそ「思考言語」の活動そのものなのに・・・・。
 言葉は 考えるための無二の道具なのだから、 小学生までの 《ストーリーにひっぱってもらう 楽しい読書》 と違って、中学からは 《立ち止まり・立ち止まりして、自ら一歩一歩イメージを作ってゆく 楽しい読書》 が ほかのどの教科よりも大切になってくる。・・・・・画面に丸ごとひっぱってもらうビデオの習慣も 頭の能動性を麻痺させる因(もと)だが、時間と知力を奪い続ける部活動にも大きな問題が隠れていると思われる。
 ともあれ、夏休みこそ 本来の読書だ! おっとその前に 読み方のコツを覚える大切な授業がある。


(*注) 以前 「英語による文化支配」についての好著が2冊出た と紹介したことがある。永井忠孝さんの「英語の害毒」(新潮新書)、もう一冊は 施 光恒さんの「英語化は愚民化」(集英社新書)。小学英会話の弊害についても詳しい。論旨が鋭い分、植民地化・奴隷化などストレートな表現が出てくるが、かえって分かりやすい。実質 ゆとり教育問題の真っ只中からみると、両方とも 分析がとても的確で 事の本質がよく分かる。同時通訳の大御所・鳥飼玖美子さんの「危うし!小学英語」(文春新書)の印象的なあとがきも示唆に富む。ウィキペディア「鳥飼・・」も参照されたし。いずれも初期英語教育の核心。きちんと外国語として教えるべきだということ。貸出可です。


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