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ほ ん と の 勉 強(PC版 )

 11、分かりやすさの 落とし穴 (勉強への入口、2)


中1で こんな問題が出ました。庭で、ひもにつながれた子犬が動きまわれる部分の面積を求めるものです。

 五円玉を糸で結んで振ると指に巻きつくように、伸びたひもが家の角で折れ曲がるたびに 順々に小さい扇形が追加される ごく普通の問題です。ところが普段は良い点をとっている子供でも さっぱりできません。挙句の果ては 問題用紙の図の 子犬に コンパスの針の方を刺したりしている始末です。子犬が動いてくれれば良いのですが、長年 動画の画面(アニメ)で育ってしまっているので、逆に自分でアニメートして イメージを作ろうとする力が とても弱いのです。

 こんなとき、もし 教室に大型画面を置いて 教材動画ソフトを見せたらどうでしょう? 子犬がピコピコ動きはじめ、ひもが 刻々と大中小のカラフルな扇形を描き出すのを見たら たちまち子供の目は輝くことになるでしょう。「僕、 とてもよく分かったよ。分っかりやすいなぁ!」

 子供が喜び、機器を導入した塾経営者も喜び、「そんなに分かりやすいのなら少々月謝が高くても・・」とお母さん方も喜ぶことになるでしょう。そして、ますます、画面文化に侵されて 子供の思考力が退化して行きます。

 子供を客席に座らせて「分かりやすさ」を提供するのなら それは娯楽産業です。
 育てなければならないのは 子供自身がイメージを想起して考える力。手を抜かず、あくまで言葉の力で分かりやすく鍛えなければなりません。

 子供が 長年 画面文化によって失って来たのは、五円玉と糸でのような 孤独で貴重な(!)遊びの経験です。


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