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《 ぜんりんしゃの本棚から 》


新開ゆり子 著、 鴇田 幹 絵
「いつでも風の中を」 金の星社
蝉林舎の本棚から 2



(これから読む人のために詳細は省略)
まず、作者あとがきより引用。

 《・・・・農民がお米を作るのに,いろいろな災害にあい、多くの苦しみをのりこえているのかを、昭和七年頃の東北の農村を舞台にして書いてみました。・・・・ 昭和七年というと、日本が第二次世界大戦へとのめりこむきっかけとなった、満州国のできた年です。そのころ、東北の村むらからは、多くの若者たちが兵隊となり、義勇軍となり、開拓農民となって、ぞくぞくと大陸に渡りはじめていました。そして、たびかさなる凶作にみまわれていた東北地方は、秋の終わりの台風で、刈りとったばかりの稲を流されてしまいました。(中略)・・・・ そういう困難の中で生きぬいていく、農民たちの姿を、肩をよせあって生きている母と子の焚く火の明るさを、みなさんの胸にともすことができたら幸いです。・・・・》

 今回紹介したのも、前回と同じ新開ゆり子の本。この作家本来の 農民の生活に根ざした とても良質の児童書で、本当は まずこちらを先に載せたいと思った本だ。小学3〜5年生向き と書いてある。活字の大きさも言葉遣いも 体裁は子供仕様だが 中身の現実感はこの人独特のもの。児童書というものは こんなにも現実的な世界に子供の心を取り込むことができるのかと 改めて感心する。中学生以上にもお薦めだ。

 同じ著者に 「ちいさなちいさな三春駒」という、さらに低学年向きの本がある。主人公が男の子で 舞台は町場、と 今回の本とは逆の設定なのだが、二作が偶然ペアになっているような印象も受ける。やはりこれも「生活が生産の場と離れてはいない」という点に起因しているのだろう。
 折しも、消費税増税で自営業のいっそうの衰退が懸念される今、ますますこの乖離が進んでゆくのだろうと思うと暗然とする。



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